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大阪地方裁判所 昭和59年(ワ)9693号 判決

一 請求原因1の事実は、当事者間に争いがない。

二 成立に争いのない甲第一号証(本件実用新案公報)によれば、本件考案は原告主張の請求原因2(一)のイないしニの構成要件からなること、その目的及び作用効果は同(二)記載のようなものであることが認められる。

三 被告が業としてイ号物件(一)及び(二)を販売、頒布していること、その構造が別紙物件目録(一)及び(二)記載のとおりであることは、当事者間に争いがない。

四 そこで、イ号物件(一)及び(二)が本件考案の技術的範囲に属するか否かについて判断する。

1 イ号物件(一)及び(二)は、前記三の争いのない事実によれば、足場板(5b、5c)を一体的に固着した足場枠(4b、4c)の前面隅寄りと後端両側にそれぞれ短い二本の連結材(34b、34c)と長い主柱(3b、3c)が回動自在に起立し、コ字型手摺(33b、33c)の両端部が主柱(3b、3c)に回動自在に軸支され、手摺(33b、33c)と足場枠(4b、4c)で接続するという構造になつているところ、原告は、右「連結材(34b、34c)」が本件考案の構成要件イ、ロにいう「前側支柱」に、右「コ字型手摺(33b、33c)」が同じく「手摺と補強を兼ねた横板」にそれぞれ該当する旨主張するので検討する。

前掲甲第一号証の「考案の詳細な説明」の記載及び図面を参照すれば、本件考案の「前側支柱(2)」は、後側支柱(3)、足場板(5)、横板(7、8、9)及び吊り材(10)と共に別紙「本件考案の説明書」第一図に示された足場装置(使用中)の骨格構造を形成するものであつて、足場板(5)に加わる荷重を受け、足場板(5)を水平に保つとともに、折り畳みの際には、吊り材(10)の上方への引張りに対応して足場板(5)、横板(7、8)等の前側支柱との係合部を引き上げる作用を有するものであることが認められる。これに対し、イ号物件(一)及び(二)における連結材(34b、34c)は、前記の構造に照らすと、コ字型手摺(33b、33c)及び足場枠(4b、4c)と係合し、使用中においてはコ字型手摺を水平に保持する作用をするとともに、折り畳みの際にはコ字型手摺(33b、33c)及び足場板(5b、5c)と一体となつて引き上げられる作用はするけれども、足場板(5b、5c)に加わる荷重は主柱(3b、3c)、斜材(31b、31c)及び足場枠(4b、4c)によつて支持されるため、使用中に足場板(5b、5c)に加わる荷重を受け、足場板(5b、5c)を水平に保つ作用はしないし、また折り畳みの際の足場板等の引き上げ作用は斜材の動きによつてなされるため、自ら能動的に足場等を引き上げる作用はしないものと認められる。

したがつて、イ号物件(一)及び(二)の「連結材(34b、34c)」は、本件考案の「前側支柱」には該当しないものというべきである。

次に、本件考案の「手摺と補強を兼ねた横板」についてみるに、前掲甲第一号証の「考案の詳細な説明」の記載及び図面を参照すれば、右横板(8)は、使用時において、前側支柱(2)と後側支柱(3)に垂直になり、前側支柱(2)と後側支柱(3)間の距離を最大に保つ作用をすること、すなわち、前側支柱(2)の先端が後側支柱(3)の方へ接近しようとする力に対抗する作用を有することが認められる。一方、イ号物件(一)及び(二)の「コ字型手摺(33b、33c)」は、本件考案における横板をコの字型に連結した形状をし、手摺の働きをすることは認められるが、前記のとおり、イ号物件(一)及び(二)には本件考案の前側支柱に相当するものがないから、本件考案の「横板」が有する前認定の作用をすることはないものと認められる。

したがつて、イ号物件(一)及び(二)の「コ字型手摺(33b、33c)」は、本件考案の「手摺と補強を兼ねた横板」には該当しないものというべきである。

そうすると、イ号物件(一)及び(二)は、いずれも本件考案の構成要件イ及びロを充足しない。

2 また、本件考案の構成要件ハの「吊り材」は、前側支柱と後側支柱の頂部間に架設されるのに対し、イ号物件(一)及び(二)では、右吊り材に相当すると原告が主張する斜材(31b、31c)が後部支柱の上部と足場枠の側部前方間に架設される点において相違することは明らかであり、このことは原告の自認するところである。

原告は、イ号物件(一)及び(二)の斜材(31b、31c)と本件考案の吊り材の各構成は均等であると主張する。

しかし、イ号物件(一)及び(二)における斜材(31b、31c)は、いずれも、使用時には主柱(3b、3c)、足場板(5b、5c)を一体的に固着した足場枠(4b、4c)と共に直角三角形状の骨格構造を構成し、使用時の荷重に耐えて足場装置の形態を保持するものであり、斜材(31b、31c)は直接足場枠又は足場板を支持する作用を有するのに対し、本件考案の吊り材は、その下端部が、前記のとおりイ号物件(一)及び(二)には存在しない前側支柱を支持し、その前側支柱が足場板を支持する構造になつている点で、両者はその作用を異にするものと認められる。また、本件考案の吊り材は、足場装置の折り畳み時に前側支柱を上方に引張り、それに伴つて横板、足場板等も上方へ引き上げるという作用をするのに対し、イ号物件(一)及び(二)では、手摺の働きをするコ字型手摺が斜材と一体となつて動くことはないのであり、この点でも両者の作用効果は異なつているものといわざるを得ない。

してみれば、イ号物件(一)及び(二)における斜材と本件考案における吊り材とは、作用効果を異にし、到底置換可能ということはできないから、原告の右均等の主張は失当である。

イ号物件(一)及び(二)は、いずれも本件考案の構成要件ハをも充足しない。

3 したがつて、イ号物件(一)及び(二)は、いずれも本件考案の技術的範囲に属しない。

五 以上の次第で、原告の本訴請求はいずれも失当であるからこれを棄却することとする。

〔編註〕本件における実用新案権、考案の構成要件は左のとおりである。

1 原告は、左の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という。)を有している。

考案の名称       折り畳み自在な足場装置

出願          昭和四九年一二月三〇日

出願公告        昭和五四年一月二二日

登録          同年八月三〇日

登録番号        第一三〇〇八六七号

実用新案登録請求の範囲 別紙本件考案の説明書記載のとおり(〔編註〕省略)

2 本件考案の構成要件を分説すれば次のとおりである。

イ 足場板の四隅に短い二本の前側支柱と長い後側支柱が回動自在に起立し、

ロ 相対向する前側支柱と後側支柱間には手摺と補強を兼ねた横板が一体的に回動自在に軸支され、

ハ 前側支柱と後側支柱の頂部間には吊り材が架設され、

ニ 更に後側支柱には取付部材が連結されたアルミニウム合金製による折り畳み自在な足場装置

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